マルチビタミンサプリメントの効果はどうなの?最新研究が示す結論

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マルチビタミンサプリメント(MVM)は、ビタミンやミネラルの不足を補うために多くの人が利用していますが、その効果については研究によって賛否が分かれています。本記事では、MVMに関する主要な研究の結果を、具体的な数値を交えながら紹介します。

1. 慢性疾患予防に対する効果

MVMの慢性疾患予防に対する効果は、特に心血管疾患やがん予防に関して、限られた証拠しかありません。Huangらによる2006年の系統的レビューでは、βカロテンやビタミンEを含むMVMが心血管疾患がんの予防に寄与しなかったことが示されています。この研究では、特に喫煙者に対するβカロテンの使用が、むしろ肺がんリスクを増加させるという予想外の結果が得られました。具体的には、喫煙者においてβカロテンの摂取が肺がんリスクを18%上昇させたことが報告されています【Huang et al., 2006】。

この研究は、MVMが慢性疾患予防に対して有効な手段とは言えないことを示唆しており、むしろ特定のビタミンの過剰摂取がリスクとなる可能性がある点が指摘されています。

2. 免疫機能と感染予防

MVMの免疫機能や感染予防に対する効果については、証拠が一貫していません。El-KadikiとSutton(2005年)のメタアナリシスでは、高齢者を対象とした8つのランダム化試験のデータを解析しましたが、MVMが感染予防に役立つという明確な証拠は得られませんでした。全体の感染率の比率は0.89(95%信頼区間[CI]: 0.78–1.03, P=0.11)とされ、感染予防効果は統計的に有意ではありませんでした。しかし、一部の試験では、MVMの使用により年間感染日数が平均17.5日減少したという結果も報告されています【El-Kadiki & Sutton, 2005】。

一方で、特定の集団ではMVMの効果がより顕著に現れるケースもあります。Barringerら(2003年)の研究では、糖尿病患者に対するMVMの使用が感染リスクを低下させ、感染による仕事の欠勤日数が減少したことが示されています。MVM群では、感染関連の欠勤日数が22%減少しました【Barringer et al., 2003】。

3. 認知機能への影響

認知機能に対するMVMの効果に関しては、明確な効果は確認されていません。Grodsteinら(2013年)は、5947名の男性を対象に12年間の追跡調査を実施しましたが、MVMの使用が認知機能に対して顕著な改善をもたらす証拠は得られませんでした。この研究では、MVM群の認知機能のグローバルスコアの変化は-0.01SU(95%CI: -0.04~0.02SU)と、プラセボ群との間に有意差はありませんでした【Grodstein et al., 2013】。

これにより、MVMが高齢者の認知機能低下を防ぐための有効な手段とは考えにくいことが示唆されています。

4. 栄養状態の改善

MVMは、特定のビタミンやミネラルの欠乏を補うためには効果的であるとされています。Griegerら(2009年)の研究では、92名の高齢者を対象に6ヶ月間MVMを摂取させた結果、ビタミンDビタミンB12葉酸の血中濃度が有意に上昇したことが確認されました。具体的には、ビタミンDが33.4nmol/L、ビタミンB12が178.0pmol/L、葉酸が13.4nmol/L上昇しました。これに伴い、骨密度や筋力の改善も見られ、転倒率の減少にも寄与したとされています【Grieger et al., 2009】。

特に高齢者や栄養不足のリスクが高い集団に対しては、MVMが有益であることが示されています。

5. その他の健康効果

特定の病状において、MVMが有効であることも報告されています。HIV陽性患者を対象とした研究では、MVMが死亡リスクを31%減少させ、結核の発症リスクも17%低下したことが示されています【Sudfeld et al., 2019】。この結果は、特定の条件下において、MVMが重大な健康リスクを軽減する可能性があることを示唆しています。

結論:マルチビタミンサプリメントの効果は人によって異なる

マルチビタミンサプリメントは、特定のビタミンやミネラルの補給に効果があり、栄養状態の改善や特定の疾患予防に寄与する可能性があります。しかし、慢性疾患予防や認知機能の改善に対する効果は限定的であり、過剰摂取がリスクとなる場合もあるため、使用に際しては注意が必要です。全ての人に有効というわけではなく、特に栄養不足や疾患リスクが高い集団においては、MVMの効果を期待できる可能性が高いと言えます。

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