マルチタスクは本当にできる?脳の限界と知っておきたい真実

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「マルチタスクって効率的でかっこいい!」なんて思っていませんか?実は、脳には同時に処理できる情報量に限界があり、実際にはマルチタスクはあまりうまくいかないことが研究で次々と明らかになっています。今回は、マルチタスクがなぜ難しいのか、そしてどうすればうまく処理できるのかについて、科学的な視点から掘り下げていきます。

認知的ボトルネックとは?脳の限界が見えてくる

マルチタスクをするたびに、「あれ?なんか効率悪くなってない?」と思うことはありませんか?これ、単なる気のせいではありません。Van Selstら(1999)の研究によれば、訓練を行っても複数のタスクを同時にこなす際の効率はほとんど改善されないことが分かっています。なぜなら、脳には認知的ボトルネックという限界があり、複数の情報を同時に処理する能力が大幅に制約されているからです。

例えば、2つのタスクをこなそうとすると、脳はそれらを順番に処理しようとするため、結果的に両方の作業が遅れてしまいます。このボトルネックこそが、マルチタスクの最大の壁と言えるでしょう【Van Selst et al., 1999】。

作業記憶がカギ?マルチタスクで重要な認知機能

Königら(2005)の研究では、マルチタスクの成否は作業記憶流動性知能に大きく依存することが示されています。作業記憶とは、短期的に情報を保持し、それを操作する能力のことで、これが高ければ高いほど、複数のタスクをこなす能力が向上します。実際に、作業記憶のスコアが1標準偏差高い人は、マルチタスクのパフォーマンスが10%向上するというデータも出ています。

つまり、誰もが同じようにマルチタスクをこなせるわけではなく、個人差が大きいのです。「私、マルチタスク向いてないかも…」と思ったら、それは作業記憶の違いによるものかもしれません【König et al., 2005】。

メディアマルチタスクの落とし穴:注意力がガタ落ち⁉

現代社会では、スマホを触りながらテレビを見たり、PC作業をしながら音楽を聴いたりと、メディアマルチタスクが日常的になっています。でも、これが実は注意力をどんどん奪っているのをご存じですか?

Ophirら(2009)の研究では、重度のメディアマルチタスクを行っている人々は、タスクスイッチングにおいて30%以上のパフォーマンス低下が見られることが確認されています。これってつまり、あちこち気を取られながら作業していると、集中力が散漫になって効率が悪くなるってことなんです。

この傾向は特に若者に顕著で、SNSテキストメッセージを多用する大学生は、学業成績(GPA)にも悪影響を受けていることがわかっています。SNSの使用頻度が1標準偏差上昇すると、学期のGPAが0.12ポイント低下するという具体的なデータも出ているほどです【Junco, 2012】。

脳の構造がマルチタスクに影響を与える⁉

ここで気になるのが、「じゃあ、脳のどこがマルチタスクに関わっているの?」という点です。Vergheseら(2016)の研究によると、マルチタスク能力に大きな役割を果たしているのは左前頭前皮質(DLPFC)という部分です。この領域の体積が大きいほど、マルチタスクトレーニングの効果が高まることが分かっています。

具体的には、DLPFCの体積が1立方ミリメートル増加するごとに、マルチタスクパフォーマンスが5%向上するとのこと。この研究では、トレーニングを積むことでDLPFCが活性化し、複数のタスクを効率よくこなせるようになる可能性が示されています【Verghese et al., 2016】。

高齢者でもマルチタスク能力は伸ばせる!?

「若い人じゃないとマルチタスクは無理?」と思っているあなた。実は、高齢者でも訓練次第でマルチタスク能力を改善できるんです。Angueraら(2013)の研究では、60歳から85歳の高齢者を対象に、「NeuroRacer」という3Dビデオゲームを使ったトレーニングを行いました。

結果、トレーニングを受けた高齢者は、なんと未訓練の20歳の若者よりも高いパフォーマンスを発揮したのです!さらに、その効果は6ヶ月間持続し、脳波検査では前頭葉のシータ波が25%増加するという驚きの結果も。つまり、年齢に関係なく、マルチタスク能力を伸ばすことは可能だということです【Anguera et al., 2013】。

トレーニングで認知機能は向上するのか?

最後に、「トレーニングでマルチタスク能力を本当に改善できるの?」という疑問。Duxら(2009)の研究では、マルチタスクトレーニングによって前頭前皮質(PFC)の情報処理速度が向上することが示されています。トレーニングを積むことで、タスクスイッチングの速度が約15%向上したという結果が得られました。

これにより、適切なトレーニングを行えば、誰でもある程度はマルチタスク能力を向上させることが可能であるとされています。ただし、限界はあるため、どんなに訓練しても、複数のタスクを完璧にこなすことは難しいことも理解しておく必要があります【Dux et al., 2009】。

結論

マルチタスク、かっこよさそうに見えるけど、実際には脳の限界がガッツリ存在します!同時に複数の

タスクを処理すると、作業スピードも正確性も下がるし、スマホとパソコンを行き来してると集中力がガタ落ちすることも。脳のトレーニングで多少は向上させられるものの、全てを完璧にこなせるわけではないのが現実です。上手くいかない時は、無理にマルチタスクを続けず、一つ一つのタスクに集中する方が効率的かも?

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