漁業は、世界中で食料供給の一端を担う重要な産業です。しかし、過度の漁獲や環境への影響を減らすため、漁業技術は年々進化を遂げています。ここでは、最新の研究を基に、漁業技術の進化とその効果について紹介します。
1. 「人工光」を使った漁業技術
人工光を利用した漁法は、古くから存在する技術ですが、最近ではLEDライトなどの低消費電力の光源が漁具に直接組み込まれるケースが増えています。Nguyen and Winger(2018)の研究によると、人工光の使用により漁獲量が増加し、無駄な混獲が減少する効果が確認されています。特に、LEDライトを使用することで、エネルギー消費が削減され、従来の漁法に比べて30%の省エネ効果が得られたと報告されています【Nguyen & Winger, 2018】。
2. 海底への影響を減らす「固定漁具」
漁具が海底に与える影響も問題視されていますが、近年では軽量で海底にダメージを与えない漁具が開発されています。Kopp et al.(2020)の研究では、軽量トラップを用いた漁法が試みられ、その結果、海底への浸食や回転が最小限に抑えられたことが示されています。この研究では、トラップが移動する距離が2.04平方メートル以下であることが確認され、伝統的な曳網漁法と比較して非常に低い数値を示しました【Kopp et al., 2020】。
3. 伝統技術と最新技術の融合
伝統的な漁法と最新技術を組み合わせることで、より効果的かつ持続可能な漁業が実現されています。Nath et al.(2018)の研究では、アッサム州の河川で「Bundh」「Dori」「Gori Jal」という伝統的な漁法が調査されました。これらの漁法は、自然の水流や魚の行動に基づいて設計されており、効果的であることが確認されています。この研究では、Bundhの漁法が最も高い効果を示し、効果指数が2.5を超えたと報告されています【Nath et al., 2018】。
4. 深海魚を狙った新たな漁法
深海の魚を対象とした漁法も進化しています。Aalbers et al.(2022)の研究では、深海のカジキを狙うために開発された「深設浮標装備(Deep-set Buoy Gear)」が紹介されました。この技術では、従来の漁法よりも高い効率でカジキを捕獲でき、過去の技術に比べて漁獲量が急激に増加していると報告されています。この漁法の導入により、地域の漁業経済も活性化しつつあります【Aalbers et al., 2022】。
5. 新しい釣り具とアプローチ
近年では、釣り具の改良によって漁獲効率が向上しています。Bursell and Arlinghaus(2018)の研究では、新しいリグの導入により、パイク(Esox lucius)の捕獲率が従来の45%から85%に向上したと報告されています。また、新しいリグは魚へのダメージを軽減し、放流後の回復率も高まることが確認されています【Bursell & Arlinghaus, 2018】。
6. 映像技術とAIを活用した漁業調査
映像技術とAIの進化によって、漁業調査も効率化されています。Sheaves et al.(2020)の研究では、リモート・アンダーウォーター・ビデオ技術(RUV)が利用され、AIによるディープラーニングを活用して魚種の識別や行動の観察が行われました。この技術により、特に幼魚の生息地調査がより正確かつ効率的に実施されるようになりました【Sheaves et al., 2020】。
7. 降下装置による漁獲後の生存率向上
捕獲された魚が深海から引き上げられた際に発生する「バロトラウマ」を軽減するための新たな技術も登場しています。Bellquist et al.(2019)の研究では、降下装置を使用してロックフィッシュ(Sebastes spp.)を再放流する方法が試みられ、深度100m未満の漁場での放流後の死亡率が7.5%まで減少することが確認されました【Bellquist et al., 2019】。
結論:技術革新がもたらす持続可能な未来
漁業技術は、持続可能で効果的な漁業を実現するために進化を遂げています。最新の技術を取り入れることで、環境への負荷を減らしつつ、漁獲量を維持することが可能です。今後もこうした技術革新がさらに進むことが期待されています。