「物より体験にお金を使おう」。そう聞いて旅行を選んだのに、準備で疲れ、帰宅すると出費が気になる。反対に、毎日使う道具には買ってよかったと思う。体験を選んだ自分は、幸せになる買い方を間違えたのでしょうか。
研究を読むと、物と体験の勝負には、もう一つの条件が入ってきます。何を買ったかに加えて、誰と使い、買った後に何と比べたか。体験への支出が好まれる結果と、その優位性が見られなかった比較を並べ、分類だけでは選べない買い物の満足を考えます。
平均的には体験が好まれる結果がある
買い物の調査と実験では、物の購入より体験の購入を振り返るほうが、肯定的な感情や幸福と結びつく結果が示されました【Van Boven et al.(2003)】。
これは物を買っても満足しないという意味ではありません。体験に分類されても、負担が大きかったり期待と違ったりすれば、個人の結果は変わります。まず最近良かった買い物を思い出し、どんな場面で役立ったかを考えます。分類だけで次の購入を決めず、自分の暮らしで得たい時間や体験があるかを確認します。
選ばなかった物との比較が満足を削る
複数の研究では、物の購入は体験の購入より、他の選択肢や価格、他者の購入との比較で満足が損なわれやすいと示されました【Carter et al.(2010)】。
物そのものの価値だけでなく、買った後も比較を続けることが関わります。必要な条件を満たす道具を選んだ後に、使う場面へ注意を戻すのは一つの応用です。新製品や安い店を見つけるたびに今回の選択が失敗だったと決めず、その道具が実際に役立っているかを別に評価します。体験でも比較がなくなる保証はありません。
待つ時間にも価値がある
体験的な購入と物の購入を比較した研究では、体験を待つ間の期待から得る幸福や楽しさが大きい結果が示されました【Kumar et al.(2014)】。
購入後だけでなく、予定を楽しみにする時間も含まれるのです。友人と日程を相談したり、当日にしたいことを一つ決めたりする時間を味わえます。ただ、予定を詰めすぎると準備が負担になる場合もあります。高額な体験を選ぶ理由にはせず、待つ間も気持ちよく過ごせる小さな予定を考える材料として使います。
共有する相手の有無を分ける
社会的か一人かという違いも同時に比べた研究では、他者と共有する支出が好まれ、体験であること自体の幸福の優位性は見られませんでした【Caprariello et al.(2013)】。
体験が良いという説明の一部に、人との関係が含まれる可能性があります。次の買い物では、誰と何をするためか、どんな会話や時間が増えるかを考えます。共有が苦手な人に交流を強制する結論ではありません。一人で楽しむ物や体験も含め、自分が満足した場面を具体的に思い出して選ぶことが大切です。
買った後の満足をもう少し具体的に見るなら、使うたび幸福度が上がる買い物、下がる買い物へ。購入前に迷っているなら、高い買い物で後悔しにくい人は価格差より使う場面を比べているで条件の比べ方を考えられます。
結論:次の支出に、過ごしたい場面を一つ描く
体験を選べば満足するとは限りません。物の購入にも役立つ場面があり、研究では共有する相手や購入後の比較が関わっていました。高額な旅行へ予算を増やす理由にせず、自分がよかったと思う時間を具体的に振り返りましょう。
次にお金を使う前に、誰と、どこで、何をするためかを書いてみてください。買った後は他の選択肢の値段だけでなく、実際に得た時間へ目を戻す。「体験だから正解」より、「この使い方が欲しい」を先にする。道具も旅行も、その問いから選び直せます。
参考文献
- Van Boven et al.(2003) — To do or to have? That is the question.。
- Carter et al.(2010) — The relative relativity of material and experiential purchases.。
- Kumar et al.(2014) — Waiting for Merlot: anticipatory consumption of experiential and material purchases.。
- Caprariello et al.(2013) — To do, to have, or to share? Valuing experiences over material possessions depends on the involvement of others.。







